こんにちは共月堂です。
 昨日も少し触れましたが、風邪と経絡という関係を少しだけ。
 

 鍼灸では経絡という観念を用いて施術を行う事が多く、その経絡という観念は黄帝内経(こうていだいけい)という書物にまとめられたのが最初だと言われています。黄帝内経は私も時折この日記で取り上げていますし、有名な書物ですので、ご存知の方も多いかと思いますが、東洋医学の古典であり根幹を成す書物です。
 経絡という物は気、血、津液といったものが交通する経路という考えをし、その流れにおいて「流れをコントロールする場所」を特別に経穴と呼びます。厳密に定義するならば、経絡上に無いものは経穴と呼ばないのですね。ちょっと専門的なお話では有ります。上の画像は、鍼灸大成という書物に書かれた経絡と経穴の図です。そのなかの膀胱経というものと、背面全体の図を載せてみました。
 経穴自体の総数は書物によって異なりますが、現在知られている数はおよそ750個。これらが正経とよばれる12本のラインと、奇経とよばれる8本のライン上に存在しています。簡単ですが、これが経絡というものと経穴の関連です。
 体を潤滑に動かす為には、経絡を気血津液の三つの要素がよどみなく巡る必要が有ります。これが滞る事が「病気である」状態と考えます。その原因は体の外から来たものによることも、体の内側から出て来たものによることも考えられ、風邪という物は体の外からやって来たものとされます。
 ここでは一般的な病気の総称として「風邪」という言葉を使っていますが、感染症による悪寒発熱を伴う症状の総称という意味としての風邪は、東洋ではもう少し細分化されていて、伴う症状によって名称も変わります。この時期から増えるものでは寒邪、寒さが主体になった悪寒から発熱に移行するようなタイプがあります。体の外から寒さが侵入し、それが経絡に入り込んで気血津液の流れを滞らせるのだ、という考え方です。
 ちょっと長くなりましたね。
 では小休止。
 鍼灸師は国家資格ですが、その資格試験を受ける条件として鍼灸の専門学校や大学において専門教育を三年以上受け、その学校において学科、実技の試験を合格して受験資格を得ます。その後に毎年二月に有る国家試験を受験し、一定以上の成績を収めて初めて合格するというシステムになっています。私も鍼灸の学校を卒業していますが、鍼灸の学校では、上記のような東洋医学の専門授業があるんです。他にも解剖学、生理学といった西洋医学の基礎分野から臨床医学といったものも習います。そんな中でもやはり、一番「鍼灸師らしい」授業が、経穴学。
 一年生に習う授業で、一年かけて経穴の全ての場所と観念を暗記するというものでした。しかも、それはペーパー試験だけでなく、実技という形で実際に同級生の体で場所を指定するという試験もあり、非常に苦労した記憶が有ります。私は物覚えが悪いので、単語帳をつくって通学の電車で毎日暗記したのを思い出します。
 今では良い思い出です、と言いたい所ですが、経穴を含め鍼灸師は毎日が勉強。今日も経穴の使われ方や場所の特定の仕方を古典や医案をひっぱりだして研究しています。