こんにちは共月堂です。
 今日は先日出席した学会関係のお話を少しだけ。
 

 昨今の鍼灸関係の学会でクローズアップされる内容は、サイトカインと神経という二つが有ります。サイトカインは簡単に言うと細胞が分泌する蛋白質で、その中でも他の細胞に影響を与えるものを言います。たとえば、皮膚を強めに叩いてみると、そこが赤く腫れるでしょう? これは「叩く」という物理刺激に細胞が反応し、サイトカインが分泌され、これによって叩かれた場所の血管が拡張して血液の流れる量が増えたため赤く見えるのです。
 同時に、叩かれたという刺激を神経が感じると、神経の末端から様々な物質が放出され、その中のCGRPやサブスタンスPといった物質によって、やはり血管の拡張が起こります。
 つまり、このような反応を効率よく利用すれば血行の改善を外部からの刺激でコントロール出来るのです。さらに血流量が増加すると、今度は局所に溜まっていた痛みを引き起こすサイトカインを血液で流してしまい、痛みを取る事も可能になります。
 炎症を作る物質を利用して、炎症や痛みを取り去る事も可能では?という考え方です。
 もっとも、この反応には更に神経や神経伝達物質など、他の沢山の事柄が関与しているため一概に上記の事柄が全てであるとは言えませんが、鍼灸には大きな意味を持っています。
 これらの「痛みとは何か?」そして「沈痛とは何か?」という部分を研究している学者の先生たちによる研究発表を実際に聴く機会が今回の学会でした。
 
 たとえば。
http://d.hatena.ne.jp/intyou99/20090510
 ひと月ほど前の日記になりますが、こちらで「更年期による顔の火照り感」に対する鍼の作用に関しての英語論文の紹介をしました。論文はこちらになります。
The Acupuncture on Hot Flushes Among Menopausal Women (ACUFLASH) study, a randomized controlled trial.
 この論文の著者の先生、Borud EK, Alraek T, White A, Fonnebo V, Eggen AE, Hammar M, Astrand LL, heodorsson E, Grimsgaard S.の一人、Elvar Theodorsson,MD(Department of Biomedicine and Surgery, IBK/Clinical Chemistry, Division of Clinical Chemistry, University of Linkoping, Sweden)さんが今回、直接講演をなさってくれました。

 これは日記に紹介したこともありましたし、内容の面白さからも興味が有った講演でした。
 簡単に説明しますと、火照り感は血管を拡張する作用のある血管周囲の神経から分泌される物質、CGRPによって血管が拡張している可能性が高く、鍼刺激により、その分泌の抑制、もしくは周辺の血流量増加による代謝の促進によって火照り感を減少させる可能性がある、という研究です。
 さらに、この血管周囲に存在し、血管の拡張に関わる神経は自律神経です。人間には外部刺激によって自律神経が動くという体性-自律神経反射というシステムがあります。コレに関しても紹介した事が有りますね。

体性-自律神経反射の生理学-物理療法,鍼灸,手技療法の理論

体性-自律神経反射の生理学-物理療法,鍼灸,手技療法の理論

 つまり、鍼という外部からの刺激によって自律神経経由でのCGRP分泌のコントロールの可能性を研究されていた先生の発表でした。これはやはり、私としては参加せざるを得ない講演でした。
 
 なんだか難しい話になってしまいました。
 続きはまた、今度にでも。