こんにちは共月堂です。
 今日は経穴の数のお話を少し。
 
 経穴を使った治療の歴史は古いという話を書きましたが、一つの体系として纏められてから、もう2200年以上経ちます。その年月の間も、経穴の研究は続き、幾度も時の政府から弾圧を受けながらも、多くの鍼灸師たちが研鑽を続けました。
 そんな歴史を持つ訳ですが、経穴も随分と変化が有ったようです。
 おおよその経穴は、前記の本、黄帝内経に記載されていて、それを基礎として追加されたり淘汰されたりしたようすが、後の世代の本を読む事で見えて来ます。
 一例を挙げると、風市という経穴があります。

 この経穴、胆経という経絡の上に有るもので、膝の痛み等に使ったりするのですが、実は風市は奇穴とする本と、胆経の経穴とする本の二種類が有るのです。確か、日本の鍼灸学校で使う教科書では奇穴の扱いだったと思います。ですが、TCMという括りでの世界標準の海外の教科書では、胆経の経穴として記載されています。
 私の経験ですと、中国の北京、天津、ベトナム、あとオランダでも風市は胆経扱いだったと記憶しています。こうなると、風市を奇穴として扱っているほうが少数派ですね。
 このような感じで、経穴の幾つかは、その根幹にある考え方に依って取捨選択されているため、全体数を断言するのは難しいと言う現状が有ります。とはいえ、そんな曖昧なスタンスの経穴の数は少ないため、おおよそ700〜750、奇穴を最大まで数えると800という数に落ち着くのは異論が無いと思います。
 
 鍼灸学校に入ると、一年目はひたすら暗記が続きます。この経穴全ての位置と、その性質を暗記し、それと並行して解剖学、生理学といった学科をべんきょうするのです。もちろん、これを一人で行える筈も無く、鍼灸師のタマゴたちが最初にする事は、一緒に勉強してくれる友人を作る事なのです。
 私も、何人かの友人と夜遅くまで経穴の暗記をしました。今では良い思い出ですが、今、院で一人経穴の本を読んでいると、一抹の寂しさを感じてしまうのは禁じ得ません。